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時代に逆行するイラストレーター 田川秀樹氏

カテゴリー4[70’sパーソンズ]

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CAT-4

空想科学イラストの旗手として知られる小松崎茂(※)氏に代表される
ボックスアートの作風は、80年代のガンプラ人気とともに
エアブラシにとって代わられ、バブル期を境に普及しはじめたCGに
反比例するかのように急速に終息していこうとしていた。
そんな中、消えようとしていた手描きイラストのレトロフューチャー世界を
オリジナル構図で色彩鮮やかに描き続け、独自のスタイルを確立した
イラストレーター・田川秀樹氏。
《時代に逆行するイラストレーター》というキャッチフレーズさながら
この先の活躍が楽しみなクリエイターの一人・田川氏に話をうかがいました。
(文責:大塚ユウコ)

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◆好きこそ、ものの上手なれ

「小松崎風のイラストを」とオーダーされることはありますが
あくまでも《手描きタッチの代名詞》という意味で受け止めています。
自分のタッチもそうですが、レトロ風の手描きタッチを
的確に言葉で表現できる人って、なかなかいないんですよね。
ひとつの作品を仕上げるのも、ずべて自分の手と頭にかかっています。
表現する媒体のサイズにあった構図を決めると、同時に全体の色も決まるので
それから、一気に筆で彩色していきます。
周りの人から、近未来の乗り物や建物を描く前の資料集めが
大変でしょ?と言われるんですが、光の陰影やテクスチャーなどは
全部、頭の中で想像しながら出来るんですよ。
それに人物を描くのも楽しいですね。
表情豊かな血の通ったヒトの肌を表現するのは、いのちを吹き込む作業に似ています。
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作品を描くときに常に心がけているのは
「平面でありながら、平面的に仕上げないこと」と
「絵具のままの色を、そのまま鮮やかに描くこと」 。
紙という平面の上に描くことにはかわりないんだけど
その描き方はきちんと陰影をつけることで、立体的な奥行き感を感じさせたい。
人の顔のように複雑な陰影が印象を左右する場合は特にそう。
それに、パキッとした原色ならではの派手さが表現できないと、
実感や手ごたえといった【描いた感】が得られなくてね。
…ともすれば、日本人が好む渋い色のような中庸さにはフィットしないかも
しれないんだけれど、それでも自分がキモチよく描ける作品が
愛すべき作品なんだと胸を張って言いたいしね。
いま気がついたけれど、こういうこだわりが
《田川スタイル》なのかもしれない…照れくさいけどね。

◆こんな時代だから、手描きレトロ

手描きでレトロフューチャーの世界を発信しはじめたのは、
小松崎茂氏の作品で育ってきた50代のオトナだちが、当時を思い出して
懐かしいと思ってくれれば…と軽いキモチからだった。
ところが予想に反して、20代の若い世代にもウケているので
自分が一番びっくりしています。うれしい誤算っていうかね。
アニメ映像やイラストでCGを起用するのが当たり前になり、
見るものすべてが精密でプログラムされた美しさがあふれていた
平成生まれの若い世代には、手描きイラストが斬新で
「新しい」 「面白い」と映ったのかもしれません。
今では子どもからおとなまで、万人がくすっと笑ってくれるようになりました。
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もともとこのタッチを中心に活動していたわけではなく、
エアブラシを使ったリアルタッチからギャグ漫画のようなタッチ、
企業のイメージイラストにいたるまで発注者のオーダーに応じて
オールマイティに描いていました。それこそ、器用貧乏っていうか
リアルタッチで勝負をかけたかったけど
需要と供給がうまくあわなかったっていうかね(笑)。

◆誰もが共通して記憶している、近未来

プラモデルの箱絵、怪獣映画のポスター、なぜなに学習図鑑…。
子どものころに買ってもらった玩具や本、雑誌など
目にする印刷物が原体験になっているような気がします。
あの頃は、小松崎茂氏など空想科学の世界を代表する作家たちにより
21世紀が夢物語のような描き方をされていて
車は空を飛んで、住まいは宇宙ステーション、ロボットは家庭に一台あって、
暮らしはどんどん便利になっていて…自分がオトナになったら
こんな世界になっているのかなぁ、と想像するだけでワクワクしていた。
しかも、近未来世界のイラストなのにどのページを開いても
細かく書き込まれた手描きで、その臨場感からワクワクがとまらない。
あの原体験が支えになっているので、いまの自分があるんです。
小さい頃に刷り込まれた記憶っていうのは、その人がいくつになっても
また、いつの時代の子どもであっても不変なんですよね。
その時のエピソードとともに、しっかり記憶しています。
強い記憶って忘れない…繰り返し同じことで感動したり、笑ったりできるんですよ。
不思議ですよね。
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いまここでレトロフューチャーの世界を描いてくれ、と言われたら
いくらでも出てきちゃいますよ。色も形も質感も、創造に限りがない。
実際に2013年の日本は空想世界の通りになっていないけれど、
空想の未来を具現化したらどうなるだろう…って思っただけで
アイデアは湯水のように湧き出てくるので枯れることがないんです。

◆平面から立体へ、世界をひろげて

今では媒体を問わず、イベントのポスター、映画の劇中素材、
テレビのバラエティ番組や新聞の連載コラムなど、
ありとあらゆるジャンルに自分の作品が活かされていて、
うれしくも誇らしく、反面どこかくすぐったいキモチもあります。
いつかは壮大なSF映画のポスターなんか手がけてみたいですよね。
自分が幼いころにゴジラやウルトラシリーズのイラストを見て
衝撃を受けたように、あの世界観を創造し、表現したい…。
それに、もともと造形会社でカタチづくる仕事をしていたせいか
平面に限らず立体的な表現も興味があります。飛び出す絵本とか
オリジナルプラモデルのモデリングからパッケージデザインにいたるまで
自分の世界観が拡がるような表現がしたいですね。
基本的には「来る者は拒まず」の姿勢なので、
ひとつひとつ目の前の仕事を大切にしながら、まだまだ興味は尽きないし、
時代の気分感っていうか流れを大事にして、しばらくは
この波に身を任せてみようかな、って思ってます。

※小松崎 茂…空想科学イラスト・戦記物・プラモデルの箱絵(ボックスアート)などで幅広く活躍した画家・イラストレーター。(1915年2月14日 – 2001年12月7日没)

【田川秀樹氏プロフィール】
1965年 広島県生まれ。
武蔵野美術大学(空間演出デザイン科)卒業後、
ゴジラシリーズ等の撮影用ミニチュア製作を担う造形会社に入社。
本格的に模型製作に携わったのち、イラストレーターに転向。
フリーランスのイラストレーターとして活動中。
2011年、ユニコーン「Z」「ZⅡ」のアルバムジャケットを手がける。
イラストレーター E SPACE 会員。日本出版美術家連盟会員。

http://www.geocities.jp/tagawatutyo/

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